大判例

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東京高等裁判所 平成8年(う)1782号 判決

被告人 野口一馬

〔抄 録〕

なお、職権により調査すると、原判示第二及び第三にかかる公訴事実においては、その全体を第二とし、被告人の被害者に対する通話及び被害者方家屋勝手口ガラス戸の破壊が一連の脅迫行為を組成するものとして分断することなく記載され、恐喝未遂の手段とされていること、これに対する罪名及び罰条も、「同(刑)法第二五〇条一項、第二四九条一項、第二六一条」と一括して記載されていることからすれば、右器物損壊及び恐喝未遂は包括一罪として起訴されたものと認められる。他方、これに対する原判示は、右公訴事実中器物損壊の事実を独立に第二として掲げ、それ以外の恐喝未遂の事実を第三として掲げ、両者につき併合罪の処理をしていることが明らかである。

そこで、記録により右事案の内容をみると、犯行の時間的経過及びその内容は公訴事実記載のとおりであって、当初の二回にわたる電話による脅迫行為に「家を壊すぞ」なる言葉が含まれており、その後被告人は実際に家屋ガラス戸を破壊し、その上で右破壊行為を行ったことをも被害者に申し向けて脅迫しているのであって、これら一連の行為はすべて恐喝未遂の手段となったと解されるのである。そうすると、原判決のように、家屋ガラス戸の破壊をことさら恐喝の手段から除去して別個の事実として掲げるのはいかにも不自然といわなければならない。さらに、恐喝未遂と器物損壊との罪数についても、前述したように、器物損壊が恐喝未遂の手段たる脅迫行為となることを意図して行われていること、この主観面を捨象し器物損壊の外形だけを捉えても、それは恐喝未遂と近接した日時場所内のものであること、両者は同一の被害者に属する同種の法益に向けられていることからすれば、本件において、恐喝未遂と器物損壊とは、公訴事実のとおり、包括一罪として重い前者の罪の刑によって処断されると解されるのが相当である。したがって、両者を併合罪の関係にあるとした原判決は法令の適用を誤ったものであるが、この場合の処断刑と正当に法令を適用した場合のそれは、上限が懲役一五年か一三年かの差があるに過ぎず、原判決の宣告刑等からみて、右の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかではないと解するのが相当である。

(小林充 山田利夫 多和田隆史)

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